人工衛星を利用して取得する各種観測データの中でも北極圏研究に深く関係するのは、地球観測衛星から得られるデータです。地球観測衛星に搭載された各種センサによって、地球上の植生、地表の水分、地形標高、断層、火山の温度分布、都市の成長過程、極域の氷の状態、氷河の進捗、海氷分布、海面温度、水質、大気の状態など、さまざまな観測をすることができます。センサが取得したデータは地上の受信局へと送られ、そこで様々な処理を経て、人間の目に理解できる画像となります。一般に衛星写真と呼ばれるものも、この衛星画像の一種です。衛星のセンサと同種のものを飛行機に積んで観測することもできますが、衛星での観測範囲とは格段の差があることは、言うまでもありません。
こうして取得された衛星データは、高度な研究から民間利用まで、いろいろな分野で広く活用されています。近年では、大災害時の状況把握のために、、商用を含む多くの画像が公開されるようになりました。JAXAは、2005年2月より国際災害チャーター(International Charter)に参加し、衛星データの社会利用に努めています。このように、容易に人間の近づけない地域の観測に、衛星データは多くの利点を持っています。極域研究への利用が強く推進される所以です。
JAXA開発の地球観測センサは、現在NASAの2つの衛星、EOS-AquaとTRMMで定常運用されています。

また、発進の待たれていたJAXAの陸域観測技術衛星ALOS(Advanced Land Observing Satellite) は、一般公募により「だいち」(Daichi)と命名され、2006年1月24日午前10時33分、種子島宇宙センターからH-IIAロケット8号機により、打上げられました。ALOS(エイロスと読む)には、3つの最新型センサ、PRISM(パンクロマチック立体視センサ), AVNIR-2(高性能可視近赤外放射計2型), PALSAR(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ)が搭載されており、さらに詳細な観測結果が期待されます。
| 衛星名 | センサ名 |
|---|---|
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陸域観測技術衛星「だいち」 [2006年10月24日 定常運用開始] |
*(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構(JAROS)との共同開発 |
| EOS (Earth Observing System) - Aqua |
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| TRMM (Tropical Rainfall Measuring Mission) |
*(独)情報通信研究機構(NICT)との共同開発 |
春先の雪解けと凍結を繰り返す2003年4月12日から27日まで、米国アラスカ州の北極海沿岸、北緯71.17度、西経156.47度の北極圏にある町バローにて、積雪観測を行いました。
観測現場は、バローから3キロメートルほどツンドラ(凍土帯)に入った広大な雪原で、町から現場までの観測機材の輸送には荷を乗せた橇をスノーモビルで牽引して行きました。

現場での観測は、雪面に穴を掘り、深さごとに雪の結晶を採り、粒の大きさ、温度、汚れなど雪質や状態を詳しく調べました。この期間中気温の上昇が例年よりも早く曇りがちな空が続きましたが、現地でしか得られない北極圏の積雪の貴重な基礎データを得ることができました。

約二週間、JAXAの地球観測技術衛星ADEOS-II(みどりII)の上空通過と合わせて行った地上観測も、1キロメートル間隔の5ポイントで2日間各2回、計4回の観測に成功しました。画像は、4月26日にADEOS-IIのセンサGLI(グローバルイメージャ)で得られた、快晴に恵まれたバロー周辺のGLI画像で、見渡す限りの銀世界です。左下から右上にかけて黒い楔(くさび)のように見えるのが海水面で、その下側がツンドラの雪原、上側が北極海を覆う海氷です。
GLIは積雪分布、雪の結晶の大きさや表面の汚れ具合などを観測し、太陽光の反射率の変化を捉えます。これによって、極や高緯度の地域スケールの気象や、地球温暖化などグローバルな気候変動に対して、雪氷がどのような影響を及ぼすか調べるのに役立つものと期待されています。
(観測協力機関:気象研究所、アラスカ大学、スティーブンス工科大学、サンディア国立研究所)