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極圏森林火災研究の状況

Prof. Fukuda

福田正己 宇宙航空研究開発機構 招聘研究員
北海道大学 低温科学研究所 教授

2003年はシベリアで過去50年で最大の森林火災が発生し、推定で約2000万haが焼失した。2004年はアラスカでやはり50年来最大規模の森林火災が発生し、約250万haが失われた。IPCC*1の第二次報告書(1995年)では北方森林では年間7億tもの二酸化炭素が吸収されていると指摘していた。しかし、近年の多発する森林火災の影響を考慮すると、周極地域を覆う北方森林は、もはや二酸化炭素の吸収源から放出源に転じている。1haのシベリアタイガ*2が火災で焼失すると、約40tの炭素を大気に放出する。同じ面積の成熟したタイガが吸収する炭素はその1/100に過ぎない。そこで北方森林火災の発生の抑制法の開発は、温暖化の抑制の最重要課題となっている。

ではどのようにして火災の発生と拡大を抑制するか。日本、米国、ロシアが国際共同で北方森林火災抑制プロジェクト(Boreal Forest Fire Control Initiative BFFCI)を展開しつつある。まずNOAA・MODISの衛星情報*3から早期の森林火災発生を検知する。次に発生箇所の地理情報や気象情報から、延焼拡大の数値予測を行う。北方森林火災は地表火なので、拡大前面に防火帯を設けることで、延焼を防ぐことが出来る。そのためには、早期の火災発生検知と的確な延焼予測が不可欠である。早期火災を確実にまたリアルタイムに検知するためのプログラム開発が進行している。北海道大学とアラスカ大学、ロシア科学アカデミー傘下の研究所が情報ネットワークを活用し、北方森林火災の影響を軽減する手法の開発を展開しつつある。BFFCIはアラスカ大学・国際北極圏研究センターを拠点とし、JAXA*4とNASA*5の支援で実践的な研究を展開しつつある。またドイツを中心とするグループも同様の森林火災早期発見ネットワークを構築しつつある。衛星情報の積極的活用と国際協力が、北方森林火災の被害抑制を達成しうるものと期待されている。

北方森林火災抑制イニシアチブ(BFFCI)の図解
北方森林火災抑制イニシアチブ(BFFCI)


以上、 AESTO News 2006 Winter No. 8 (平成18年1月 発行 財団法人地球科学技術総合推進機構)より全文転載。


Web版のための補足(*)

*1 IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change)
気候変動に関する政府間パネル」のこと。政府間との名があるが、参加者は、公募により選ばれる各国代表数名による科学者が主体のようである。 地球温暖化の実態把握とその精度の高い予測、影響評価、対策の策定を行うことを目的として、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)の協力の下に1988年に設立された。1990年、1995年、2001年にそれぞれ1回目、2回目、3回目の報告書(第一次評価報告書、第二次評価報告書、第三次評価報告書)をとりまとめている。
*2 タイガ
ロシア語でシベリア地方の針葉樹林の意。ユーラシア大陸・北アメリカ大陸の北部(亜寒帯)に発達する針葉樹林のことを指す。
*3 NOAA・MODISの衛星情報
国立海洋大気圏局(National Oceanic & Atmospheric Administration、略称NOAA)は、アメリカ商務省の機関のひとつで、地球の海洋と大気の状態を専門としており、気象に関する警報なども出すが、ここでいうNOAAは、この機関が数多く上げている観測衛星のうち、極軌道衛星シリーズの総称。NOAAの搭載センサーのうち、AVHRR(Advanced Very High Resolution Radiometer)よりの取得データが利用される。また、MODIS(Moderate-resolution Imaging Spectroradiometer)は、衛星のセンサー名で、NASA*5の上げた2機の地球観測衛星TerraとAquaに搭載されている。
*4 JAXA (Japan Aerospace Exploration Agency)
独立行政法人宇宙航空研究開発機構、日本の宇宙開発政策を担う文部科学省所管の独立行政法人。略称「JAXA(ジャクサ)」。
*5 NASA (National Aeronautics and Space Administration)
アメリカ航空宇宙局、略称「NASA(ナサ)」、アメリカ合衆国の航空技術および宇宙開発計画を担う政府機関。

[掲載日 2006.2.1]

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更新日 2008/4/1