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Research Highlights - 北極圏研究最前線

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ベーリング海 海氷漂流ブイ設置 2007年2月

北極海および亜寒帯縁辺海における河川−海氷−海洋生態系への気候変動影響モニタリング *
(2006年度JAXA委託研究)

Prof. Enomoto
Bethel to Emmonak
べセルよりユーコン川河口の町エモナックに漂流ブイを運ぶ。町の向こうには結氷したベーリング海が広がる。

雪氷および海氷−沿岸域相互作用班
北見工業大学 教授 榎本浩之

近年、北極海に流入する河川の流量が増加していることが報告されています。高緯度の河川は、淡水供給により塩分を低下させて海氷成長を促進する効果がある反面、河川水の熱量により結氷を抑制すると考えられています。これらの相反する効果により河川と海氷成長の関係は複雑で明らかにされないまま現在に至っています。また、河川水による陸上からの物質流入は、海洋生態系を考える上で重要な要素となっています。河川の流量と物質輸送は、短期的には陸域での降水量の変動と関係し、また長期的には氷河・永久凍土融解による影響を受けており、海洋生態系への複雑な連鎖が存在しています。

大河川と海氷の変動の関係や海氷の広がりと海洋生物の関連を調査する目的で、2007年2月に、アラスカ・ユーコン川河口の海岸から約20km沖合の定着氷の上に漂流ブイを設置しました。

設置までの準備
結氷した海域での観測は難しく、冬期のユーコン川河口への接近も未知の状態でしたが、幸運にもアラスカの人々による支援が得られ、漂流ブイを設置することができました。アラスカ西部ベーリング海に近い町ベセル (Bethel) にあるUSFW (U.S. Fish and Wildlife Service) のYukon Delta NWR (National Wildlife Refuge) からは、冬期のユーコン川付近へのアクセスや航空輸送方法の情報および輸送の中継、ベセルでの滞在や観測機材準備場所の提供などの支援を得ました。ベセルから小型飛行機でユーコン川河口の村エモナック (Emmonak) に飛びました。エモナックからスノーモービルで凍結したユーコン川を20km下ると河口です。さらに沖に向かって定着氷上を20km走り、凍ったばかりの薄い新生氷が出たところで最初の漂流ブイを設置し、そこから20km北方までの海氷上に2基設置して観測グリッドを形成しました。定着氷の崩壊と流出のタイミング、流出後の収束・発散、回転、変形など動的な情報を3基のブイで収集し、MODIS、AMSR-Eなどの衛星データと対比します。

map
ユーコン川河口付近の漂流ブイ設置点および水サンプル採取域。
GI-Modis冬のMODIS画像と漂流ブイの設置域。
(観測日:2007.03.04、画像提供: Univ. of Alaska, Geophysical Inst.)
buoy
海氷観測用漂流ブイ。
GPSによる位置情報を
グローバル通信衛星経由で
送ってくる。

setting
結氷したベーリング海上での漂流ブイ設置。

最新の技術と人間の経験
観測では、ORBCOMM社のグローバル通信で漂流ブイからの位置情報を入手します。最新の衛星データと解析手法を駆使して最新の技術で海氷研究にアプローチしています。

今回の観測では、現地の人々の関心と理解を十分に得ておくことが重要であることを再認識しました。ユーコン河口のエモナックの町に到着すると、すぐに町の代表者を訪ね計画を説明し、さらに現地の人々の理解と協力を得るために町の寄り合いに出席させてもらい、また現地の学校を訪問して先生や生徒にわれわれの訪問と目的を紹介しました。この町の人々は、近年の海氷変化に大変関心があり、自分たちの周りで何が起きているのかという問いかけをよく聞きました。国際極年 (IPY: International Polar Year) についてもよく知っており、自分たちの町が世界的な環境変化を観測する舞台となり、その成果が世界に向けて紹介されることを期待しています。結氷したベーリング海をスノーモービルで1日かけて100kmほど走って観測装置を設置することができたのも、現地の支援者の経験と観察力に拠るところが大きいです。スノーモービルで案内してくれた現地の漁師さんは、インターネットで衛星画像を見て、海氷状態やクラックの発生、海氷上の冠水を自分の経験と照らしあわせて予想しています。また、近年の海氷変化についてもいろいろな観察結果を話してくれました。

漂流ブイ設置後もベセルとエモナックからブイ稼動確認の情報、海氷や水路の変化、河口の水色変化などに関する連絡が継続して届いています。4月下旬、ユーコンデルタ沖合の水が茶色に濁り始めました。融雪水が大量に沿岸に出ているようだという話です。

観測が成功し、ユーコン河口の町の人々に漂流ブイ観測や衛星観測から得られた成果を伝えることができることを願っています。

(以上、写真・資料とも榎本氏提供)

* なお、「北極海および亜寒帯縁辺海における河川−海氷−海洋生態系への気候変動影響モニタリング」は、北海道大学大学院水産科学研究院の齊藤誠一教授を代表研究者として、2007年度も継続して行われております。

[掲載日 2007.5.18]

 
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更新日 2008/4/1