陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)は、調査地域の画像を約30シーン取得しました。この時期のアラスカの天候は不安定なため、残念ながら快晴に恵まれた日は多くありませんでしたが、地上の様子が詳しくわかる画像も得られました。そんな貴重な1シーンが、フェアバンクス市の北東約200kmで高度690kmからとらえた右の画像です。人間の目で見るのとほぼ同じ配色で合成したトゥルーカラーで、画像中央を右から左に流れるのがユーコン川本流です。白いのは水面の動きや濁りのせいと思われます。池や支流の水面は概ね黒っぽく現れています。右肩の白いもやは雲か火災の煙か定かではありません。
赤い四角で囲った地域をクローズアップしたのが下の画像です。右下から左上に向かってユーコン川の支流が黒く、蛇行しながら流れています。その両岸にピンク色に染まった部分が見られます。衛星「だいち」がとらえたこのピンク色の原因は、ヤナギランという植物の花の色なのです。
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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)によるアラスカ・ユーコン川支流流域のトゥルーカラー画像(2006年7月24日観測)。地上分解能は10m。ピンク色に見えるのがヤナギランの群生地。ALOSは、2006年秋から本格運用の予定で、現在校正検証中。 |
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| 朝日新聞社機から撮影したヤナギランの群生地。火災による倒木も見られる。 |
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| 地上観測班が撮影したヤナギラン(北大・早川博士提供)。高さは数10cmで大人の腰の高さほどである。花は夏に咲き、一つの花の大きさは1〜2cmで、下から上に向かって順に開花していく。てっぺんの花が開花すると、それは夏の終わりをあらわしているといわれている。 |
ヤナギランはfireweedと呼ばれ、森林火災の跡地や山を切り開いた跡地に真っ先に生えてくる植物の中の代表的な種です。 ピンク色のヤナギランが咲いている土地は、2004年の大森林火災の被害にあった地域と一致します。
同じ地域を朝日新聞社機から観測・撮影しました。鮮やかな花の色の中に、火災によって黒ずんだ樹木や倒木が観察されます。また、柳などの低木が点在する地域があることもわかりました。今回の航空機による近距離からの観測で、火災の影響を受けた地域と受けない地域では、植物の種類が明らかに違うという、ALOSの観測結果を裏付ける重要なデータが得られました。
地上では北大チームが土中の水分量や、地中の温度分布の違いなどを調査しました。永久凍土への火災の影響度の違いが、植生の違いを生み出していると考えられます。
ALOSのAVNIR-2による画像をさらに詳しく解析すると、植生の密度や活性度がわかります。解析の結果、火災跡地の植物はほかの土地より活性度が高いことがわかりました。森林は火災によって一度死に絶えても、そこからまた新しい植物が芽吹き、再生していきます。ヤナギランの草原は森林の一生の始まり、元気な子供であるともいえます。森林の成長と回復のメカニズムを見つめ、理解を深めるためにも、衛星観測を続けていくことが大切です。
[掲載日 2006.9.1]