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Research Highlights - 北極圏研究最前線

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北大低温研、朝日新聞社、JAXAによるアラスカ大森林火災の影響調査

〜2004年アラスカ大森林火災が陸域環境に与える影響のモニタリング(2006年度JAXA委託研究)〜

project
地上・航空機・衛星による観測(イメージ)。


2006年夏、北海道大学低温科学研究所福田正己研究グループ、朝日新聞社、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が協力し、大規模な森林火災や虫害による森林破壊が地球環境にどのような影響を与えるのかを調べるために、朝日新聞社機と陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)を用いて、新しい試みを行います。

今回の観測の特長は、アラスカでの現地調査と同時に、同じ調査地域を航空機と衛星を使って観測することです。人の目、鳥の目、宇宙の目、三つの視点で同時に調査を行うのは世界でも初めての試みです。

ALOS画像 NDVI
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)によるフェアバンクス市周辺のトゥルーカラー画像(2006年4月27日観測)。ALOSは現在校正検証中で、本格運用は2006年秋以降の予定。 植物の活性度を緑色であらわしたイメージ。色が濃いほうが活性が高く、白いほうが活性が低い。赤丸で示した地域は2004年の大森林火災の被害地。2006年4月でもまだ活性が低く、被害の影響が残っていることがわかる。
Alaska map
JERS-1/SARモザイク画像によるアラスカ。 1997年〜1998年に観測された画像をカラー合成処理した。 (JAXA地球観測研究センター(EORC)「地球が見える」より)。

地上からの観測だけでは、調査できる地域が限られ、いわば「点」としての情報しか得られません。福田グループではこれまで、地上観測とあわせて衛星画像を使って広域の研究も行ってきました。今回、地上観測と衛星観測のスケールの中間を補うのが航空機による観測です。

地上調査を行っているときに、航空機は立体視ができる写真を撮影するため、上空を平行に二回低空飛行します。これによって森林破壊の空間的・立体的な状況を把握することができます。そして、地上での観測と、宇宙からの観測を重ね合わせることで、的確に観測結果を評価することができます。今回の観測のために、5月に二回、北海道で予行演習を行いました。

MODIS IMAGE 1
2004年6月30日、MODISによって観測されたアラスカの森林火災。灰色の煙が立ち昇る様子が観察される。 提供: MODIS Rapid Response Project at NASA/GSFC

北極圏に広がるタイガと呼ばれる森林地帯では、山火事が頻繁におこります。今年もアラスカでは7月中旬までに200件以上、面積にして約860平方キロメートルの森林が燃えてしまいました。しかし、2004年にアラスカで起こった大森林火災は、過去50年のうちで最悪のものでした。被害面積は2004年6月から12月までの間に約250万ヘクタールにおよび、これは東京23区の40倍以上にあたります。アラスカ州中央部のフェアバンクス市の近くで起こった火災では、樹木だけでなく、地面の表面を覆っていた土壌部分まで燃えたことが観察されています。

このような大規模な森林火災は周辺の環境に大きな変化をもたらします。例えば、北極圏特有の凍結した土壌(永久凍土)が溶け出したり、地下水の流量や河川への土壌流出量が変わったりします。火災後の樹木の再生の様子や速度も、小規模の火災とは異なる可能性があります。

アラスカの森林環境の変化は、森林が吸収・放出する二酸化炭素(CO2)の量を変化させ、北極域だけでなく地球環境全体にも影響を及ぼす可能性があります。森林火災を検知し、延焼を食い止める事は今後重要になると考えられます。

また、最近では虫害による森林破壊も目立ってきています。虫害はフェアバンクス市南方100kmに位置するケナイ半島で特に深刻で、原因のひとつとして温暖化があげられています。

地上観測は5つのチームに分かれ、連携して行われます。

総括班
研究全体をとりまとめ、永久凍土表面が火災によってどの程度の影響を受けたかを定量的に評価する指標を作成します。
永久凍土班
地形変化の調査、地下5〜10メートルのボーリング調査、地温観測データの回収および新しい機器の設置、レーダなどによる地下構造の物理探査を行います。永久凍土の消失は水循環や生態系に影響を与えるので、水文班、生態班と協力して作業を進めます。
水文班
火災の影響による周辺の水循環変化の長期モニタリングを行います。融雪量、河川の水質、土砂の流出特性変化を調べ、地表面からのCO2放出量変化も検知します。また地温、水分、熱伝導率が植生が回復することでどのように変化するか測定します。
生態班
大規模な火災では、土壌中の植物の種まで焼失してしまうので、植生が再生するためには外から種が飛んでこなくてはいけません。また、完全に焼失した土地に生える植物は競争がないため、小規模な火災後の植物の成長速度より早く成長すると考えられます。このような火災の規模による生態系変化の違いを調査します。また、地中の根・無機物・有機物量の変化を調べます。
火災検知班
衛星画像を用いて、カナダ北西部から東シベリアまでの北方森林帯の森林火災を観測し、IARC-JAXA情報システム(IJIS)を用いて延焼を計算・予測し、火災の検知についてより確実な情報提供をめざします。また、植生の分光特性から、火災の重度、虫害、森林立ち枯れについて調査します。森林被害とCO2ガス吸収・放出とのかかわりを生態班と協力して調査します。
調査の模様1 調査の模様2
調査の模様3 土壌や植生・水質を測定し、実際の火災の様子も観察する。
(写真提供:福田研究グループ)
調査の模様4

森林火災観察

今回の研究結果は、2007年2月にフェアバンクスにて行われる「第7回地球温暖化と北極域の気候・環境変動に関する国際会議(GCCA7)」およびワークショップで発表されます。

[掲載日 2006.7.20]

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更新日 2008/4/1